WordPressサイトを運用していると、「お問い合わせフォームからメールが届かない」「会員登録時の通知メールがスパムフォルダに入ってしまう」といったメール配信に関するトラブルは少なくありません。こうした問題の多くは、WordPressが標準で使用するphp mail()関数による送信が、信頼性に欠けることが原因です。
そこで今回は、WP Mail SMTPプラグインとGmail(Googleアカウント)を組み合わせて、より確実で安全なメール配信環境を構築する方法をご紹介します。
本記事では、以下のような方を対象としています。
• WordPressで「Contact Form 7」や「MW WP Form」を使っている
• メールが届かない、スパム扱いされる問題に悩んでいる
• Gmailアカウントを使ってSMTP認証でメールを送信したい
• Google Cloud Console の設定手順に不安がある
画面付きでのガイドではありませんが、文字ベースで一つひとつ丁寧に解説していますので、初めての方でも問題なく設定できるはずです。
Gmailアカウントの準備
まず最初に、メールの送信元として使用するGmailアカウントを用意します。
すでに使用中のアカウントでも問題ありませんが、業務用サイトや通知専用として使いたい場合は、新しくGmailアカウントを作成することを推奨します。たとえば、notifications.example@gmail.com のような専用アドレスを用意しておくと、後々の管理が楽になります。
二段階認証はONでも問題ありません(むしろ推奨)
将来的にこのアカウントを共有する予定がある場合、パスワードの管理にも注意が必要です
Google Cloud Console へのログインとプロジェクト作成
次に、Googleの開発者向けプラットフォームであるGoogle Cloud Consoleにアクセスします。
Gmailアカウントでログインしたら、新しいプロジェクトを作成しましょう。プロジェクト名は任意ですが、「WP Mail SMTP」など、目的が分かる名前にしておくと良いでしょう。
初回利用時の注意点
• 請求情報の入力を求められる場合がありますが、Gmail APIの利用は無料の範囲内で十分です
• 国の設定は「日本」で問題ありません
Gmail API の有効化とOAuth同意画面の構成
Google APIを使用してGmail経由でメールを送るには、Gmail APIの有効化とOAuthクライアントIDの作成が必要です。
手順概要
1. 左メニューの「APIとサービス」>「ライブラリ」から「Gmail API」を検索して有効化
2. 「認証情報」>「OAuth同意画面」からアプリ情報を登録
• ユーザータイプ:外部
• アプリ名・サポート情報などは適当に入力可
3. OAuth 2.0 クライアントIDの作成
• アプリの種類:ウェブアプリケーション
• 名前:WP Mail SMTP Web
• 承認済みのリダイレクトURI に以下を入力:
https://connect.wpmailsmtp.com/google/
このリダイレクトURIは、WP Mail SMTPがGoogleから認証トークンを受け取るための戻り先URLです。これが正しくないと認証が通りません。
クライアントID・シークレットの取得とWordPress設定
OAuthクライアントを作成すると、クライアントIDとクライアントシークレットが発行されます。これらをWordPress側のWP Mail SMTP設定画面に入力します。
WP Mail SMTPの設定方法
1. WordPressの管理画面にログイン
2. 左メニューから「WP Mail SMTP」>「設定」へ
3. メーラーの選択で「Google / Gmail」を選択
4. 以下を入力:
• クライアントID:Googleから取得したID
• クライアントシークレット:同上
• 認証URL:自動で設定されます(https://connect.wpmailsmtp.com/google/)
設定を保存すると、「Google アカウントの許可」ボタンが表示されるのでクリックします。Googleログイン画面が表示されるので、メール送信に使うアカウントを選択し、許可を与えます。
アプリの公開設定(初回のみ)
初めてOAuthアプリを使う場合、Googleは「このアプリは確認されていません」と警告を出します。これは想定どおりの動作です。
公開設定の手順
1. Google Cloud ConsoleでOAuth同意画面の設定に戻る
2. アプリの公開ステータスを「テスト」から「本番」に変更
これで、Googleアカウントとの認証がスムーズに行えるようになります。
メール送信テストと確認
最後に、WP Mail SMTPの「メールテスト」機能を使って、設定が正しく行われたかを確認します。
• 宛先アドレスに自分のメールアドレスを入力
• テストメールを送信し、受信できるかを確認
• 届かなかった場合は、エラーメッセージを確認して設定を見直す
まとめ
GmailのAPI認証を使ってWordPressからメールを送信することで、従来のphp mail()によるメール送信よりも遥かに高い信頼性とセキュリティを実現できます。設定はやや複雑に見えますが、一度構成してしまえば非常に安定した運用が可能です。
御社サイトにおいても、ユーザー通知・お問い合わせ対応・予約受付など、メールの重要性は高まる一方です。ぜひこの方法を導入して、メール送信の品質を向上させてください。